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2025/05/28

NEWS

「カルチャーと家庭養育」第1回を開催 

「カルチャーと家庭養育」第1回を、4月29日に開催しました。

今回は、映画『ほどけそうな、息』を上映。そのあとに、この映画の企画・制作にたずさわった、西日本こども研修センターあかし研修事業課長の佐藤剛氏(家庭養育支援機構理事)と、児童相談所の現場に詳しい西日本こども研修センターあかしセンター長の藤林武史氏(家庭養育支援機構アドバイザー)に、お話いただきました。

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映画は、児童相談所で働く若い児童福祉司が、日々、さまざまな出来事に直面し、特にある母子との出会いによって、心を揺さぶられながら、変わっていく様子を丁寧に描いています。実話をもとに描かれていて、児童相談所の現状を知ることができる貴重な映画でもあります。

主演の小野花梨さんは、今年のNHKの大河ドラマ「べらぼう」での演技で記憶に残っている方も多いでしょう。繊細な中に、強さを秘めた演技は、とても魅力的でした。この映画でも、自分の生い立ちと向き合いながら、きびしい状況にある母子に向き合っていく姿が、こまやかに演じられています。

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映画上映後に、まず佐藤さんから、なぜこの映画を作りたいと思ったのかというお話がありました。佐藤さん自身、児童福祉司として児童相談所に長年勤務されていて、社会的養護の子どもと向き合ってこられました。同時に、もともと映画が好きで、さらに友人が作った映画が海外の映画祭で上映されたときに、いっしょにその場に赴き、自分も映画を観る側から作る側になりたい、という思いが強くなったそうです。

また佐藤さんは、テレビドラマなどでの児童相談所の描き方に長年疑問を持っていました。そして本当の児童相談所の姿を伝えたいとの思いから、「ソーシャルワーカーによるソーシャルアクション」として、現場の人の協力も得て、映画の企画制作に携わるようになりました。この映画は二本目の企画制作作品であり、東京のミニシアターで上映され(レイトショーでの上映)、10日連続で満席だったそうです。

藤林さんは、長年、児童相談所の所長を務めていました。この映画を観たときには、日常がリアルに描かれていて、脚本がとてもよく練られていると思ったそうです。児童相談所の職員の仕事は感情労働であるにもかかわらず、息つくひまもないほど、次から次へと起こる新たな出来事に対応しなければならない。個々の職員は、その大変さを乗り越えながら、目の前の人に向き合っていく…そのあたりが大変よく描かれていると話されていました。そして映画に登場している親子の今後を含めて、ぜひ続編を、と発言されていました(どのような続編かは、映画を観るとわかります)。

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そのあとは参加された方々から活発な意見が出されました。実際に現場で働いている方は、映画の感想とともに現場でのことも率直に話され、「支援者が支えられる」ことの重要性も話題になりました。午後の上映後も様々な感想とともに、それぞれの方の社会的養護、家庭養育への向き合い方なども意見として出されました。

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「カルチャーと家庭養育」は、今回初めての試みでしたが、すばらしい映画をいっしょに観て、そのあとに制作者の話を聞き、さらに参加者同士で話ができる、という得難い場ができたように思います。私自身も映画を観て、自分の経験を振り返りながら、いろいろなことを考えることができた貴重な機会でした。

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じつは、9月に第2回を企画しています。社会的養護などにかかわっている人だけでなく、子ども、福祉、などにたずさわっている人にも関心のあるテーマです。

詳しい内容は、後日、ホームページなどでご案内いたします。

ご期待ください。

(坂本純子)